猫の主な病気一覧
感染病
猫汎白血球減少症(パルボウイルス感染症)
「パルポウイルス」に感染することで起こる感染病で、白血球が極端に少なくなり、ひどい下痢や吐き気などの症状が現れます。体力のない子猫がかかると90%が死亡すると言われている恐ろしい病気です。またパルポウイルスはとても強いウイルスで、強力な消毒薬を使わないと環境に残って他の猫に感染することもあります。
猫カリスウイルス感染症
「猫カリシウイルス(FCV)」に感染することで起こる感染病で、生後6~10週の子猫に多くみられます。かかり始めはくしゃみ、鼻水、発熱などヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)と似た症状が現れます。病気が進行すると舌や口のまわりに腫瘍ができ、痛みのせいでたくさんよだれを垂らすようになり、口臭が強くなります。重症化すると肺炎を起こし、衰弱することもあります。
猫カリスウイルス感染症とヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)は併発することが多いため、通常、1つの病気として対処されます。
ヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)
「ヘルペスウイルス」に感染することで起こる感染病で、咳、発作的なくしゃみ、高熱などの症状が現れます。かかり始めは鼻水や目やにが出て、進行すると食欲低下や下痢にともなう脱水症状などが起こり、重症化すると肺炎を起こして死亡することもあります。
目の病気
結膜炎
瞼の裏側の結膜で炎症が起こった状態で、片目または両目で起こります。主な原因は猫カリスウイルス感染症やヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)などの感染症で、腫れのために涙が出たり、目やにが出たりするほか、重症化すると眼球と結膜が癒着して瞼が開かなくなることもあります。
白内障
カメラレンズのような役割を担う「水晶体」という器官が、一部または全部白く濁ってしまう病気です。主な原因は加齢で、加齢とともに発症するものを「老年性白内障」と言います。進行すると水晶体の濁りが強くなって目がよく見えなくなり、歩行や段差の上り下りなどで支障を来すようになります。
ベンガルが、かかりやすい病気です。
緑内障
何らかの要因で房水の流れが阻害されて、眼圧が高くなる病気です。遺伝、外傷、腫瘍などのほか、猫伝染性腹膜炎や猫白血病ウイルス感染症などが原因で起こることがあります。目がよく見えなくなって歩行時にものにぶつかったり、段差でつまずいたりするようになります。また痛みのために目を瞬かせたり、たくさん涙を出したりするなどの異変が現れます。進行すると視力の低下や失明に至る恐れがあるので注意が必要です。
角膜炎
角膜で炎症が起こった状態で、主な原因は他の猫との喧嘩による外傷です。アレルギーやウイルス感染が原因で起こることもあります。痛みのために目を瞬かせたり、涙や目やにが出たりして目のまわりが汚れます。
角膜潰瘍
主に外傷が原因で角膜の組織が欠けてしまう病気で、強い痛みがあるため眼を瞬かせたり、瞼を痙攣させたり、たくさんの涙が出たりします。また結膜の充血、角膜の浮腫や混濁がみられるケースもあります。
耳の病気
外耳炎
耳介から鼓膜まで(外耳)までの皮膚で起こる炎症で、細菌や耳ダニなどの寄生虫やアレルギーなどが原因で起こります。はげしい痒みや痛みのために、首を振ったり、後ろ足で耳を引っ掻いたりする仕草がみられるようになります。大量の耳垢や悪臭のある分泌物が出たりもします。
マンチカンが、かかりやすい病気です。
中耳炎・内耳炎
多くの場合、外耳炎が進行して鼓膜に穴が開き炎症が中耳・内耳にまでおよぶことで起こります。耳を痛そうにしたり、頭を傾けたり、歩行異常(回転するように歩く)などの異変がみられ、重症化すると平衡感覚が失われて立てなくなったり、食欲低下などの症状が現れたりします。
耳ダニ症(耳疥癬)
多くの場合、外耳道(耳の入口と鼓膜の間)に「ミミヒゼンダニ」が寄生することで起こり、外耳炎と同じような症状が現れます。子猫や家の外へ出る機会がある猫に多くみられ、母猫が感染していると子猫にもうつることがあります。
耳血腫
何らかの要因で耳介の血管が破れて、血液が溜まって耳介が膨れ上がった状態です。耳を掻いた際のひっかき傷や、他の猫との喧嘩で負った外傷などが原因で起こることが多く、症状が悪化したり、治療が遅れたりすると耳の形が変形してしまうこともあります。
脳・神経系の病気
脳腫瘍
脳腫瘍とは、脳やそのまわりにできる腫瘍のことです。以前は猫の脳腫瘍は多くないと考えられていましたが、検査技術の向上により発見されるケースが増えています。初期には目立った症状が現れませんが、腫瘍が大きくなると食欲低下、元気がなくなる、四肢の麻痺、視覚障害などの症状が現れます。
てんかん
てんかんとは脳に起こる障害で、全身の痙攣や意識障害などの症状が現れます。原因がはっきりわからないもの(真性)と、脳腫瘍などの脳疾患が原因で起こるもの(症候性)に分けられ、猫の場合、症候性てんかんが多いとされています。
泌尿器・生殖器の病気
慢性腎臓病
尿を作り老廃物を体外へ排出するなどの働きを持つ腎臓が、正常に機能しなくなった状態で、機能低下が3ヶ月以上続くと慢性腎臓病と診断されます。早期発見が難しい場合が多く、病状が進行すると尿量・飲水量の増加、食欲低下、体重減少、脱水、貧血、嘔吐などの症状が現れます。さらに悪化すると尿が作れなくなり、沈鬱や痙攣などの尿毒症の症状が現れるようになります。高齢の猫に多くみられ、15歳以上の猫の約30%がかかると言われています。
尿毒症
腎臓機能が低下して、本来であれば尿と一緒に排外へ排出される窒素化合物などの老廃物やリンが蓄積されている状態です。沈鬱や痙攣などの症状がみられ、症状が進行すると昏睡状態に陥って死亡してしまう恐れがあります。
尿石症
尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に結石ができる病気で、膀胱炎や尿路閉塞の原因となります。比較的若齢から起こり、頻繁にトイレに行くがほとんど排尿しない、血尿、陰部を舐める、排尿時に独特の鳴き声を上げるなどの異変がみられるようになります。尿路閉塞は命に関わるので緊急に処置しなければならず、特に雄猫は尿道が細く結石が詰まりやすいので注意が必要です。
スコティッシュフォールドが、かかりやすい病気です。
膀胱炎
膀胱炎の粘膜で炎症が起こった状態で、頻繁にトイレに行くがほとんど排尿しない、血尿などの症状がみられます。原因ははっきりわかっていませんが、細菌感染や膀胱結石、ストレスなどが要因ではないかと考えられています。原因不明の膀胱炎(特発性膀胱炎)の場合、通常、4~7日程度で自然治癒しますが再発しやすいです。感染症がみとめられる場合には、抗生物質を投与して治癒をはかります。
呼吸器・肺の病気
上部気道感染症
「ヘルペスウイルス」「猫カリシウイルス(FCV)」などに感染することで、人間の風邪と同じような症状が現れる病気です。主な症状はくしゃみ、鼻水、発熱、食欲低下などで、ヘルペスウイルスに感染したケースでは涙が出る、結膜の充血などもみられ、猫カリシウイルスに感染したケースでは舌や口腔内の炎症、また潰瘍による痛みやよだれなどの症状がみられます。関節炎を発症することもあります。
鼻炎
鼻の粘膜で炎症が起こった状態で、くしゃみ、鼻水、涙や目やにが出るなどの症状が現れます。主な原因はウイルス感染、真菌、口腔内疾患などですが、原因がはっきりしないものもあります。
喘息
何らかの要因により気管支が狭窄して呼吸困難を引き起こす病気です。ゼーゼーという呼吸音、また咳やチアノーゼなどの症状もみられます。呼吸困難に陥ると命に関わることもあります。
肺炎
ウイルス、細菌、誤嚥などの様々な原因により、肺で炎症が起こった状態です。咳、発熱、呼吸音の異常、食欲低下などの症状が現れますが、重症化すると呼吸困難に陥って死亡することもあります。特に子猫では重症化しやすいとされています。
口・胃・腸の病気
歯周病
猫の口の病気で最も多いのが歯周病で、年齢が上がるにつれて発症率が高まります。歯茎の腫れ、痛み、出血、口臭、歯の動揺などの症状がみられ、進行すると顔が腫れることもあります。さらに進行すると歯を支える骨が溶けてしまい、歯が抜ける、顎の骨が折れる、鼻と口が繋がるなどの問題が起こる恐れがあり、予防のためにはご家庭でのデンタルケアと、動物病院での歯科検診の受診が大切です。
口内炎
歯茎、舌、頬の内側などの口の粘膜で起こる炎症のことで、出血や痛みのせいで食欲が低下したり、よだれが出たり、口臭がきつくなったりします。
急性胃腸炎
主に異物の誤飲や有毒植物の摂取などにより、消化管で炎症が起こった状態です。寄生虫、ストレス、アレルギーが原因で起こることもあります。
大腸炎
腫瘍、大腸ポリープ、アレルギー、異物の誤飲などが原因で大腸で炎症が起こった状態です。排便時に痛みをともない、便に血や粘液が混じることもあります。
腸閉塞
主に異物の誤飲が原因で腸が完全に塞がれた状態です。嘔吐、腹痛、食欲低下などの異変がみられるようになり、異物が自然に排出されることは少なく、最悪の場合、腸が壊死してしまうこともあります。
壮年期以降の猫でよくみられる病気
一般的に7~10歳の時期を壮年期と言い、11歳以上を高齢期と言います。若齢の時にはあまりみられなかった、次のような病気にかかりやすくなります。
関節炎
猫でよくみられるのは変形関節炎で、体を支える前足、後ろ足、股関節などで多くみられます。12歳以上の猫の約90%がかかるとされていて、爪とぎをしなくなる、毛づくろいをしなくなる、特定の部位をよく舐める、高いところに上らなくなったなどの異変が起こります。
高血圧症
血圧が正常値よりも高い状態が続くことを高血圧症と言い、初期には食欲低下、体重減少などの症状が現れ、進行すると眼障害(高血圧性網膜症)、腎臓障害、心血管障害、脳神経障害などを引き起こします。慢性腎臓病の猫の約20%がかかるとされています。
ノルウェージャンフォレストキャットが、かかりやすい病気です。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、体の組織の代謝が亢進して様々な症状を引き起こす病気です。主な症状に体重減少、多食、嘔吐、多飲・多尿、活動亢進(攻撃的になる、夜泣き、てんかん様発作など)、食欲低下などがあります。9歳以上の猫の約10%がかかるとされています。
心臓病
猫の循環器疾患の約40%を心筋症が占めていて、特に肥大型心筋症にかかることが多いとされています。心臓の働きが弱くなることで元気消失や食欲低下などの症状が現れ、症状が急激に悪化して急死する恐れもあります。
メインクーンが、かかりやすい病気です。
認知機能障害
高齢期に入ると、人間で言うところの「認知症」と疑われるような症状が現れることがあります。猫などのペットの場合、認知症ではなく認知機能障害と言いますが、主に「見当識障害(迷子になる)」「関係性の変化(家族がわからなくなる)」「睡眠覚醒サイクルの変化(昼夜逆転)」「トイレの失敗(トイレ以外での排泄)」「活動の変化(好きだったことに興味がなくなる)」などの異変がみられるようになります。ただし、腎臓病や高血圧、不安やストレスでも同様の行動をとることがありますので、異変をお感じになられたら一度当院へご相談ください。
慢性腎臓病
腎臓の機能低下が3ヶ月以上続いた状態で、15歳以上の猫の約30%がかかるとされています。
歯科疾患
壮年期以降、歯周病、歯肉炎、口腔内の腫瘍などの歯科疾患が増えます。特に多いのが歯周病で、そのままにしておくと歯が抜ける、顎の骨が折れる、鼻と口が繋がるなどの問題を引き起こします。歯周病を予防するにはご家庭でのデンタルケア、そして動物病院での歯科検診の受診が重要となります。